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[編集]労働政策審議会レポート(第138回)[活動|広報]
投稿時間:09年11月25日

労働政策審議会 労働力需給制度部会
今後の労働者派遣制度の在り方について傍聴レポート

JSGU政策部長 木村德太郎 

 1120日に開催された第138回労働力制度部会についてレポートします。 

138回 平成211120日(金)9:0011:00 

今回の議題は

  1. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について
  2. 今後の労働者派遣制度の在り方について
 

 施行規則の改正は派遣元事業主が厚労省に提出する事業報告に関するものです。

この改正の趣旨は、前回労働側委員から、派遣労働者が雇用保険や社会保険に加入してない者が見受けられたという指摘があり、個々の派遣労働者の社会保険等の加入状況の確認を厳格化するというものです。

 そのポイントは

  1. 早期に実態の把握をするため、派遣元事業主の事業年度経過後3以内を1ヶ月以内に短縮すること。(但し、収支決算書は従来どおり3月以内)
  2. 毎年61日現在の「派遣労働者の数及び登録者の数」と「雇用保険および社会保険の派遣労働者の適用状況」については、630日までに提出すること。
  3. 事業報告書の様式を変更し、次の3点を記載すること。
  4. 派遣労働者数
  5. 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の未加入者数
  6. 未加入者の氏名及び未加入の理由
  7. 一般労働者派遣事業許可更新の申請期限を、許可の有効期限が終了する3月前に改める。(社会保険の未加入が疑われる派遣元に対する実地調査をする期間をとるため)
 

この改正案について、労働側委員は

「派遣元がキチンと報告するか、実効性に疑問がある。むしろ人材派遣健康保険組合(はけん健保)の活用をするほうが加入促進に繋がる。しかし実態は332社しか健保組合に入っていない。組合に入る基準が事業所設立3年以上という基準も厳しいのではないか」と意見を述べ、これに対し事務局は

「社会保険等について個々の労働者について報告させることで、指導監督に入ることができ、法違反の取締りができる。はけん健保については大手の派遣会社が設立した健保組合であり、運営に関して直接指導することはできないが、多少入りやすくできないか相談するような対応はしたい」

使用者側委員は

61日現在の報告を630日までにするメリットは何か」と質問し、事務局は

「時期を繰り上げることによるメリットは、派遣労働の実態を早期に把握できる。従来61日の派遣実態の報告は、派遣元企業の事業年度(決算期)経過後3月となっていた。これだと4月決算の派遣元が61日の報告を提出するのは、翌年の7月となってしまう。厚労省は全ての派遣元の報告を受けないと実態の把握が出来ない。今回の改正で早い段階で実態を把握できるというメリットがある」と答えた。結果、本件は審議会として認めるという結論が出されました。なお、施行日は平成2231日となっています。 引き続き「今後の労働者派遣制度の在り方について」審議が進められました。今回は、6.情報公開、7.派遣先の責任強化、8違法派遣への対処関係、9.罰則関係、10法律の名称について議論されました。 

6.情報公開について 

●労働者側委員:派遣労働者には知る権利があり、自分の派遣料金と賃金を知ることは重要。不当なピンはねをする派遣会社は止めておこうという判断が出来る。(事務局に対し)三党案でいう一人当たりというのはどういう趣旨か

●事務局:一般公開と個々人の公開に分かれる。一般公開としてはいわゆるマージンに関するもの、個々人のものは派遣料金と賃金というように理解している。

●労働者側委員:情報公開の中身は具体的であるべき。資料4ページの「研究会報告」の「情報公開を通じて、良質の派遣元事業主が、派遣労働者から、さらに派遣先から選択されるようにすることにより、結果的にこれが(教育訓練や待遇改善)実現される」とある。優良な派遣会社とは何か、労働者はマージンの多寡に興味がある。派遣労働者に対するヒアリングによると、たとえば交通費が出るか、食堂の利用が出来るかなどの情報も公開してほしいとの声がある。派遣元から派遣先への情報公開に健康診断の実施なども加えてはどうか。また、派遣先の労働組合が自社に来ている派遣労働者の実態が判らない。(数がわかれば)正社員の代替防止、コスト安が目的であれば、派遣労働者の賃金が低いことを理由に社員の賃金が引っ張られる(賃金が下がる)という懸念もある。

●使用者側委員:公開される情報には個人情報や営業情報等もあり慎重にすべき。

●労働者側委員:良質な派遣会社というためには情報公開は重要。(新たな政府案に)三党案を取り入れるべき。使用者側委員・・マージンに関して、個々の派遣料金と賃金の差だけ出すことにどれだけの意味があるのか。マージンには必要経費があり、(単に派遣料金と賃金の情報を出すことは)無用な混乱が生じる。個人情報の保護も充分に考える必要がある。派遣先労働組合に対する情報公開は、個社の判断で(情報提供)するのは構わないが、法で決めるのはいかがなものか。情報公開することで派遣先の労働組合が何をするのか。何でもかんでも情報を得るというのはいかがなものか。

●労働者側委員:マージンについて、派遣料金から賃金を引いたものがマージンとはいえないと思っている。社会保険や有給休暇のことも考えると35%程度ならまあまあ(許せる)、50%なら酷いという人が多いのではないか。こうした情報は見えたほうが良いのでは。間接雇用の派遣労働者は自分の賃金が「どうやって決められるのか分からない」労働組合の活動で労使交渉に派遣労働者のことを入れようとしても、人事部が把握していない、何人いるか分からない。安全衛生等でも把握が必要。現在は労使協議会に派遣労働者は載らない。

●使用者側委員:使用者も情報公開について、全部反対といっているわけではない。派遣労働者を使うことで、社員の賃金の引き下げは労働条件の不利益変更となり、そのようなことはあり得ない。

●労働者側委員:良い会社ばかりなら規制はいらないが、法違反をする会社もある。情報公開をすることは重要。どうやったら都合よく経営できるかだけでなく、人(労働者)を守るにはどうするかが大切。昨年末の「派遣切り」の際、派遣先の労働組合は(派遣労働者を)どのように労使交渉に載せるか苦心した。交渉のテーブルに載せない経営者が多かった。その結果、割り増し退職金を出させるようなことが出来なかった。また、派遣先企業が派遣元に(派遣切りされる労働者に対して払ってもらうために特別に割り増し料金を)支払った例があったが、派遣労働者に支払われなかった例もいっぱいあった。法律で(労使自治からも)労働組合に情報提供し、交渉のテーブルに載せることも重要。 

7.派遣先責任の強化関係 

●使用者側委員:三党案のうち項目④の「未払い賃金に関する派遣先の連帯責任」と⑤の「社会保険に関する派遣先の連帯責任」はあまりにひどい。そもそも法律として違法前提の派遣先責任強化は、派遣元からすると払わなくても(派遣先が払ってくれるから)良いと考える、そのように導く可能性がある。派遣先は賃金部分と社会保険部分を含めて派遣料金を払っているのに、更に支払うということはどうか。現行法で問題ないと考える。⑪の団体交渉の応諾も不要である。最高裁の判例(注・添付資料の朝日放送事件を参照)があり、その範囲でよい。仮に団体交渉に応じたとしても、労働条件改善は派遣先では出来ない。苦情処理については現行規定にあり拡大することには反対。

●労働者側委員:三党案⑧の「労働保険の保険給付の請求に係る便宜供与」は必要。労災事故は派遣先で、かつ派遣先の指揮命令の中で発生するので連帯責任について検討すべき。⑪の団体交渉の応諾について、先日全国労働委員会議があり、地方で「誠実団交の申請」が多くなっていることが話題となった。(派遣労働者に関して)朝日放送事件が引用されるケースが多く、地位確認や未払い残業手当問題など「あっせん」でしか対応できない。 団体交渉のあり方についてもっと検討すべきでは。現行の労組法で出来るのか、労組法の改正が必要なのかを含め検討すべきでは。

●使用者側委員:三党案の⑥、⑦の安全衛生に関して事務局はどのように考えるか

●事務局:派遣労働者に近いところは派遣先であるので、たとえば健康診断などを派遣先が派遣元の代行するのは理由がある。

●労働者側委員:たとえば育児休業などは、労働者保護の観点から強化したほうがよいのではないか。

●使用者側委員:具体的なものが良く分からない。育児休業の不利益取り扱いとは何を示すのか。具体例がないと意見が言いにくい。

●事務局:三党案の項目で言うと①は派遣元と派遣先の力関係に格差がある。②の例では、派遣先が「年休を取るのだったら来なくてもいい」というようなことがある。③は「育児休業を前に取った人は派遣しないでくれ」というようなもの。⑧の労災発生時の情報提供がなされないことがないように、派遣労働者が派遣先に請求できるというのはメリットがある。⑨の性別に関しては、派遣先での配置(業務の配分も含め)男女で差が出る。たとえば営業の場合、男性は外勤、女性は内勤などが上げられる。

●労働者側委員:未払い賃金について、実際に例があるが、派遣元が倒産した際に派遣先が(国の立替払い制度で賃金が支払われるまで)賃金の立て替え払いをした。したがって全く考えられないわけではない。検討をもっとすべき。

●使用者側委員:派遣先の責任強化を一律に求めるのはどうか。項目⑥の安全衛生教育はどのように行うか具体的なところも論議が必要。⑦の定期健康診断等の代行も、派遣元事業主の違反前提だと派遣元が責任放棄することも考えられる。 

  8.違法派遣への対処関係

  9.罰則関係

10.法律の名称 

●公益委員:違法派遣の雇用契約申込み、いわゆる「みなし」をどうするのかについて議論をお願いしたい。

使用者側委員:契約の自由があり、直接雇用のみなしは問題がある。派遣元が本当に無許可・無届であったことを派遣先が知り得ていたのかについて、第三者の判定が必要。派遣労働者が派遣先に通告する(三党案)ことになれば紛争化する。裁判で争って決めるというのでは双方にとって不利益。また、仮に直接雇用のみなしで雇用契約が移転した場合、労働条件等はどうなるのか。(派遣されていた業務を社員がしていない場合)就業規則にないこともある。期間制限違反をした場合、もともと有期契約だったものを無期にすると契約にない契約を結ぶことになり問題である。

労働者側委員:違法派遣を放置すれば良いのか?雇用、労働条件等の保護は刑罰や罰金だけでは不十分。地位確認や賠償責任などの民事効果をつける必要がある。近年、労働審判や訴訟が増えている。前回(政府案の答申)は指導監督で整理したが、「みなし」規定は入れるべき。労働者の地位が移転する法のつくりは検討する。 雇用契約の申し込みをするとき、労働者や派遣先からするかより、法律で「みなし」とする方が良いのでは?そのあたりの見解を法学者として、鎌田委員にお伺いしたい。

鎌田委員:派遣先の雇用契約発効は民事効 民事効 として労働者の債権として請求する。これがうまくいかないときは、債務不履行による損害賠償請求となる。「在り方研究会」の基本は、そうすることが本当に労働者に良いのか、という立場で議論し報告書にまとめた。たとえば、「みなし」とした場合、労働者の意思がない場合(派遣先での直接雇用を希望しない場合)どうするのか。個々の法違反の対応に個々の労働者の意思が入るのは法としていかがなものか。そうであるなら、民事効と行政勧告を組み合わせることが方向としては良いのではないか。

労働者側委員:違反があって「みなし」で派遣先の直接雇用を労働者が拒否したい場合、退職の自由で担保できるのではないか。法的に損害賠償だけか、地位確認との並列はあるのか。

鎌田委員:地位確認が先。「みなし」の場合、退職の自由で担保できるかというと、例えば有期の場合は(その契約が終了するまで)退職の自由がない。そのような問題もある。

労働者側委員:事務局に質問したい。この場合行政としてはどのように考えるか。

事務局:実体規定として民事効とした上で、雇用申込みを派遣先がしない場合、行政勧告は可能であるし、労働者本人が訴訟することも可能である。

労働者側委員:本人が訴訟するために勧告を前置するのではないですね(勧告がないと訴訟ができないということではないですね)。

事務局:勧告が前提ではありません。

使用者側委員:契約、採用の自由の原則に関して「在り方研究会」ではどのように考えましたか。

鎌田委員:採用の自由について、違法なことをしている時に、採用の自由を第一義的に考えるのは適切ではないのではないかと考えたと思います。

事務局:派遣労働者のメリットを考え雇用契約申し込みを行政が勧告し、違法な場合は罰則で対応することが適当と考えた。

使用者側委員:違法なことをしている派遣先に労働契約を移転するというのはどうか。

事務局:平成20年の政府案では、最終的に労働者の判断に委ねるという建付けとなっています。

使用者側委員:「みなし」ではなく罰則の強化で良いのではないか。

労働者側委員:罰則強化より「みなし」規定の方がより効果があると考える。派遣法の名称を変えても問題がないのでは。

使用者側委員:派遣先にとっては、無届の派遣会社を使ったことによって罰則と雇用の「みなし」という2つともというのは問題がある。

事務局:経済的事件での罰則強化という流れがある。 

清家委員:本日は時間となりました。次回はまだ議論していない積み残し点と登録型と製造業務の在り方について意見をいただきたいと思います。審議の進め方について委員の方からご意見がありますか。

使用者側委員:公益委員で次回までにこれまでの議論の整理をしていただきたい。

清家委員:参考となるよう整理したものを準備する。

              (次回)論議は労使で深めていただきたい。 

次回の審議会は11月26日(木)午前9時から開催されます。 

今回の論議の中心は、情報公開と派遣先責任と法違反があった際の派遣労働者の雇用をどうするのかという3点になりました。

情報公開については個々の案件をどのようにするかがポイントとなり、派遣先責任について使用者側(というより派遣先)は強化に反対、というスタンスがより明らかになったとみました。

なお、違法な派遣が行われた場合、派遣先の直接雇用と「みなす」という部分については

まだまだ議論の余地がありそうです。 


第138回労働政策審議会報告

第138回労働政策審議会資料